人財力

人財採用と育成に力を入れている企業を紹介

我が社の人財力

株式会社リンクアンドモチベーション 代表取締役会長 小笹 芳央
意欲向上策で企業成長を導くプロフェッショナル

余計なことを考えず目の前の仕事に集中しよう

株式会社リンクアンドモチベーション 代表取締役会長 小笹 芳央

モチベーションに着目した組織変革コンサルティング。そんな斬新なサービスを提供するリンクアンドモチベーションは2000年に創業し、いまでは売上高300億円を超える一大グループに成長した。同社を立ち上げた代表の小笹氏は、人材採用や育成支援、就活生支援のプロフェッショナル。ベンチャー企業への就職に関心のある学生向けに、就職先の選び方や入社後にもつべき心構えなどを聞いた。

トップが表に出てこないベンチャーは要注意

-人材を採用するに当たって大切なことはなんでしょうか。
経営トップが自ら採用の前線に出ているかどうかですね。私も学生に「トップが表に出てこないベンチャー企業は要注意だ」とアドバイスしています。

 ベンチャー企業は大手との採用競争で苦戦することがありますが、成果を出している会社というのは、トップ自らが時間とコストとエネルギーを採用にそそいでいるところです。

 学生が就職先を決める要素は主に4つあります。第1は業界・職種、つまり、やりたいことかどうかです。次に、その企業が掲げる使命や理念で、それらに共感できるかどうか。3つめに、その企業を構成している人や組織風土の魅力です。そして最後が、給与や福利厚生を含む待遇が希望に合致するかどうか。就活生はこれらの要素を総合的に勘案して、最終的に就職先を決めていきます。

 このうち、第4の待遇面を除いた3つをトップ自らが訴求するということは、それだけ採用に力を入れ、未来の企業成長につなげていきたいという考えが強いということなのです。第4の待遇面は、だれが説明してもそんなに訴求力は変わらない。それにベンチャー企業の場合、この面ではなかなか大手に対抗できないでしょう。しかしそのほかの3つは企業側にとっては勝負になります。

「なぜ特定の業界で、特定の事業を展開しているのか」という意義をいちばん的確に語れるのは、そんなビジネスを立ち上げた起業家自身だからです。使命や理念も、それをつくったのは経営者である場合が大半で、本人が語ることで言葉の奥にある想いまで含めて伝わる。そして人を採用し組織風土をつくりあげたのもトップなのだから、その背景にあるものを、熱意を込めて語れるはずです。

 それに気づいている経営者は、自ら採用現場の最前線に出ています。
-人材を早期に戦力化するために心がけていることを教えてください。
 入社後すぐに高い基準を植えつけ、鼻をへし折ってあげることです。

 たとえば当社では、新人に1ヵ月ほど飛び込み営業を経験させます。いちばん安価な商品を営業させ、1万円、2万円のお金をもらうことがいかに大変かを実感させるのです。「まだまだ自分はなんの役にも立っていない」「これから本気で学ばないといけない」と気づくことで成長が加速するのです。

やりたいことなんてまだ決めなくていい

-成長するために人材側が留意すべきポイントはなんでしょう。
 とにかく仕事の海に飛び込んで、必死に泳ぐことです。赤ちゃんが言葉をおぼえるとき、「この言葉をおぼえたらご飯がもらえる」などと計算していたはずがない。言葉の海に飛び込んで必死にもがいているうちに、おのずと必要な言葉を身につけていったわけです。

 社会人として赤ちゃんであるスタート時点では、「この仕事にどんな意味があるのか?」などと余計なことは一切考えない。ひたすら目の前の仕事に集中しましょう。それが、結果的に早い成長につながるのです。
-新卒入社者の早期離職が問題になっています。原因はなんでしょう。
 新卒者側が就職活動中につくり上げた「壮大なる自己像」と、実際に入社してからの泥くさい日常のギャップが原因だと考えています。

 就職氷河期のころから、採用面接で「あなたはなにをやりたいのか」と聞かれるようになりました。学生は、これまでの人生に接続したカタチで、やりたいことを明確に説明しなければならない。しかもそれが、その企業のなかにある業務とマッチしている必要があります。この極めて難しい課題をクリアするために、学生は「○○をやりたいと思っている自分」をつくり上げます。往々にしてそれは、等身大の自分とはかけ離れた壮大なる自己像になってしまいがちです。

 ところが入社後に待っているのは、泥くさい日常です。そのギャップに耐えられなくて、辞めてしまうと考えられるのです。

 早期離職の問題については、企業側が内定段階でリアルな日常の仕事を見せてあげることが、解決につながるかもしれません。
-最後に就職活動中の学生にメッセージをお願いします。
 先ほどの話とつながってくるのですが、「やりたいこと」というのは、就職先を決める4要素のうちの、ただひとつの要素にすぎません。学生も企業と同じように、「やりたいこと幻想」から脱却するべきです。本来、社会人になってから長い時間をかけてつくり上げていくはずの自分を、就職活動中に固めてしまうなんておかしな話なのですから。
小笹 芳央(おざさ よしひさ)プロフィール
1961年、大阪府生まれ。1986年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、株式会社リクルート(現:株式会社リクルートホールディングス)に入社。2000年、株式会社リンクアンドモチベーションを設立、代表取締役社長に就任。同社は2008年に東証一部へ上場。「モチベーションエンジニアリング」という独自の技術を開発、幅広い業界の顧客からその有効性を支持されている。2013年1月、代表取締役会長に就任。グループ13社の代表を兼務する。

企業データ

設立 2000年3月
資本金 13億8,061万円
売上高 319 億5,000万円(2015年12月期:連結)
従業員数 1,369名(2014年12月末現在:連結)
事業内容 モチベーションエンジニアリングによる企業変革コンサルティング、モチベーションマネジメント事業(人事・教育支援)、エントリーマネジメント事業(採用・動員支援)
URL http://www.lmi.ne.jp/

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