コールセンターや大手EC倉庫、アパレル、通信業界、飲食店など、さまざまな業種を対象に人材派遣サービスを展開しています。100名規模の大規模プロジェクトへの派遣依頼が多くなっており、昨年は、新型コロナウイルス感染症対策における助成金関連の審査センターやワクチン接種のコールセンターといった、「国策」にまつわる仕事も引き受けました。コロナ禍による、求人倍率の低下や企業活動の抑制などの影響で、人材業界の厳しさが指摘され始めています。そうしたなかで当社は、昨年度の売上高が前年比300%に達しました。

　派遣スタッフの心のコンディションを、当社が独自に開発したシステムで数値的に見える化することで、的確なマネジメントを即時に行えているからだと思います。私は長年人材業界に携わっていますが、「数値化して評価する基準」を明確に示せる人材派遣会社は、ほとんどないと思っています。当社は、「あいまいなことを定義して定量的に扱う」ことで、これまでにない人材サービスを提供することにこだわっています。この「心のコンディションの可視化」はまさにその象徴で、それが結果的に、派遣スタッフの働きがいとパフォーマンスを最大化させることにつながり、クライアントが期待する以上の成果となって表れるのです。働く人の「心」と「懐」を豊かにすることで、派遣スタッフがハイパフォーマーになり、その結果、クライアントから、再び依頼をいただく好循環が生まれています。

　派遣スタッフ本人からヒアリングする「主観データ」と、「パフォーマンス」の因果関係と相関関係を、自社開発した仕組みで解析します。たとえば、派遣スタッフに定期的に実施するアンケートの回答内容をもとに、独自のアルゴリズムで「成長実感」「貢献実感」など、働きがいを測る8つの指標によって、コンディションを数値化します。その数値を、派遣プロジェクトごとの「入社率」「出勤率」「継続率」の3つのKPIと重ね合わせて、その動向をチェックするのです。たとえば、「必要とされている」という実感の数字が下がれば、即時にスタッフフォローの専門部隊がフォローに入ります。その対応が少しでも遅れると働きがいが低下し、出勤率や残存率、生産性の低下として顕著に表れてしまいます。

　デイリーでプロジェクトごとのKPIをチェックし、問題発見・問題解決はその日のうちに対応するというスピードにもこだわっています。客観的な数値によって可視化されているため、単純なアンケートでは把握しきれない変化にも気づくことができ、手厚いフォローが可能になるのです。

　「気分が落ちかけているとき、必ずと言っていいほど連絡が入る」といった声が多いですね。「だから、もっとがんばろうと思った」と言ってくれます。

　私が起業した大きな理由のひとつに、「人材業界の常識を変えたい」という想いがあります。残念ながら人材業界には、「派遣スタッフが辞めれば、すぐに補充すればいい」という風潮があるため、人材が育ちにくいのです。派遣先で少しでも長く活躍してもらい、派遣スタッフ自身の市場価値を高めてもらう。そうやって成長した人材が増えれば、クライアントにも質の高いパフォーマンスを発揮でき、業界全体に好循環が生まれます。それこそが、私たちの「介在価値」だと思っています。

　だから当社では、一定数以上の派遣スタッフが稼働するプロジェクトには、派遣先に当社の本社勤務の営業社員を管理スタッフとして常駐させるのです。私も約14年間、人材業界に携わっていますが、総合職の営業社員をクライアントのもとに常駐させる派遣会社を見たことがありません。こうして、派遣スタッフに最大のパフォーマンスを発揮してもらえる体制を整えているのです。

　テクノロジーを活用した「心のコンディションの可視化」の取り組みをさらに強化したいと考えています。現在は、主観データとパフォーマンスの解析ですが、そこに生体データとビッグデータもくわえ、AIによるデータ分析手法の開発を、大学に同研究というカタチで協力をいただき、準備を進めています。そうすることで、派遣スタッフに対してよりきめ細かいサポートができる「HRテック企業」になれると信じています。

　当社は「働く人の心と懐を豊かにする」をミッションに掲げています。派遣スタッフにも当社の社員にも、ほかの人材派遣会社では経験できない「やりがい」や「充実感」を味わってほしい。そして、がんばって喜ばれる仕事をしたからこそ報酬もたくさん受け取り、「心」も「懐」も豊かになることで、人生の豊かさを感じてほしいのです。人材業界を変革するだけのチャレンジを続けている当社には、そのフィールドが広がっていると考えています。